月夜の砂漠に一つ星煌めく
トルトさんは、そんな事を言うと、また自分の仕事に戻って行った。

一人残された俺は、明かりが灯った広場の中央に腰掛け、何となく舞踏団の皆を、見ていた。

食事を用意する者。

舞台の掃除をする者。

壊れた服を修復する者。

みんな、生き生きと働いている。


「ジャラール!」

アリアが、嬉しそうに近寄って来た。

「今日はご馳走だって。楽しくなるわ。ジャラールは、お酒飲む?」

「……少しなら。」

「あら、飲めないの?」

「まだ飲み始めて、間もないんだ。最初からそんなに、飲めないよ。」

本当は、成人の儀が終わらないと、お酒は飲んではいけないのだけど、ハーキムが『今から飲み慣れていないと、成人の儀で急に倒れてしまう可能性も。』と言っても、少しずつ飲ませてくれていたんだ。

「そうだ!兄さんに会った?」

「兄さん?ああ、さっきテントの外に、来ていた人?」

「ふふふ。今のところ、声だけね。」
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