月夜の砂漠に一つ星煌めく
だがそこで、ハーキムの変な真面目さが、横やりを差した。

「そんな事はございません!ジャラール様は、この国では、ネシャート王女に次ぐお立場の方です!それに、他の国へ行けば……」

「ハーキム。」

本当にハーキムと言う奴は、何があっても、俺の一番の味方であってくれるんだ。

「有り難う、ハーキム。だが私は、王子であって王子ではない。それでいいんだ。それに、そんな規則等破ってしまった方が、おまえだって気軽に母君に、会えるだろう?」

「あ、いや……私は……」

言葉を詰まらせるハーキムに、女中はクスッと笑った。

「ジャラール王子。私はハナンと申します。」

「母上!」

ハーキムが、女中を止める。

「ハーキム。王子は、私達が考えている以上に、大人であらせられる。私達親子の事を、ここまで思って下さっているのが、何よりの証拠じゃないか。そのような方が、一女中を特別待遇にするなどないですよ。」
< 177 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop