月夜の砂漠に一つ星煌めく
しばらくして、王の間に呼ばれた俺は、なんとか気を取り直して、自分の部屋を出た。

「ジャラール様。ここからしばらくは、笑わないで下さい。」

「分かってる。さっきの事を、思い出さなければな。」

そう言っている矢先に、ふと思い出してしまって、思わず声に出して、笑ってしまった。

「ジャラール様!」

これにはハーキムの刺すような目が、久しぶりに飛んで来た。

「分かってる。」

喉を鳴らし、真っ直ぐ前を向いて歩いていると、後ろにいたはずのハーキムが、隣に来た。

「ジャラール様。今日の儀式なのですが。」

「どうした?」

「近隣の国から、王位継承権を持つ王子達も、顔を揃えております。恐らく未来のネシャート様の、お相手になられるであろう方々です。」

それには、胸がチクッと痛んだ。

「将来、その方がこの国においでになった時、直ぐに自分の意にはできると思われては、困ります。」

「そうだな。」
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