月夜の砂漠に一つ星煌めく
「今日のお振るまいに、十分お気をつけ下さい。」

「ああ。」

俺は、手をぎゅっと握った。

「そして、各国の美姫達も、ジャラール様のお妃の座を狙っております。」

「それなら、案ずる事はない。自分が気に入った女を、妃にする。」

するとハーキムは、軽くため息をついた。

「そうできぬのが、王族なのですよ?」

「まあ、そうだろうがな。王位も告げない私に、わざわざ嫁いでくれる美姫など、おらぬであろう?」

そう言って微笑んだ俺に、ハーキムはクスリと笑った。

「どうでしょうかね。ジャラール様をご覧になったら、心を奪われない姫がいるでしょうか。なんと言っても、アラブで一番の美少年ですからね。」

「俺は、見た目だけか。それとも見せ物か。」

「はははっ!それだけいい男って、ことですよ。」

ハーキムは笑いながら、俺の肩を叩いた。


「それと……」

「まだあるのか。」

少し振り向いた俺に、ハーキムは顔を寄せた。
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