月夜の砂漠に一つ星煌めく
もし、アリアの事が耳に入っていたとしても、“姫君”なんて表現、使うだろうか。

そっと、父上の顔を覗いて見ると、父上は見計らったかのように、ネシャートをちらっと見た。


息が止まった気がした。

父上が、俺とネシャートとの関係を、知っている?

まさか……

まさか!


「例え、想いが叶わないとしても、見初めてしまったからには、気持ちを諦めるのは、難しいだろう?ジャラール。」


ー 想いが叶わないとしても ー


知っている。

絶対に知っている。

父上は、俺達が愛し合っている事を、知っている。

その証拠に、王妃の顔がみるみると、青くなっていく。


「国王……それは……」

体も声も、王妃は震えていた。

「それ以上、言わなくても良い。」

冷たい視線を投げ掛ける国王に、王妃ばかりか、俺でさえも体が引いてしまった。

「そこでだ、ジャラール。最後にこれからの道を、そなたに選ばせる事にしよう。」
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