月夜の砂漠に一つ星煌めく
「えっ?」

いつの間にか、周りがざわつき始める。

「国王。その……これからの道と言うのは……」

ドキドキしながら、父上に尋ねた。

「今日来ている、いづれかの姫と婚姻を結び、その国の国王となるか、」

噂では聞いていたが、父上の口からはっきりと言われると、やけに現実味を帯びてくる。

「この国に留まり、ネシャートの家臣として、甘んずるかのどちらかだ。」

周りのざわつきは、尚一層大きくなった。

姫君を持つ王とすれば、自分の国に婿養子に来てくれるだろうと、思い込んでいたはずだし、この国の民としてみれば、一人しかいない王子が、“家臣”になるなど、到底考えられない事だったからだ。

ハーキムもたまりかねて、俺の側に寄って来た。

「ジャラール様。国王になられる道があるのであれば、家臣に成り下がる必要は、ございません。あなた様は、国王に相応しいお方です。このハーキムが、保証致します。」
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