月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ハーキム……」

「ネシャート様の事は、お辛いでしょうが、直に胸の痛みは和らぎます。そういうモノです。ですが家臣に下った悔しみは、一生残ります。」

俺は、そっと前を向いた。

父上は、表情を動かさず、どちらでもいいといった感じ。

ただじっと、俺だけを見つめていた。

王妃は、どこかしらホッとした表情だった。

どこかの国へ行って貰えば、ネシャートととの間違いなど、起こり得ないと思っているのだろう。

ネシャートは、唇を噛み締めながら、下を向いていた。

俺の幸せを思えば、どこかの姫と結婚して、国王になってほしいという、考えなんだろう。


胸が苦しかった。

俺はこの中では、厄介者扱いなんだ。

生まれ育った場所を後にして、どこかへ消え去ればいいと思われているんだ。


ネシャートと離れる事が、寂しいんじゃない。

国王になれないのが、悔しいんじゃない。


ただただ、孤独だと言う事が、俺を苦しめていた。
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