月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ジャラール様。あれは、何だったのでしょう……」

「さあ?」

ハーキムと一緒に、女の子の背中を見送り、冗談だったとしても、ほんの少しだけ、救われた気がした。


「あっ、舞踏団の躍りが、始まりますよ。」

ハーキムが指差した先を見ると、ちょうどアリアが、踊るところだった。

いつもよりも綺麗なドレスを着て、その裾を持ちながら、アリアは我々に、頭を下げた。

「この度は、ジャラール王子の成人の儀、誠におめでとうございます。我が舞踏団も、心よりお慶び申し上げます。」

「有り難う。」

アリアに分かるように、微笑んだつもりだったけれど、彼女はなぜか、知らない振りをしていた。

ああ、やっぱりパッと見た感じだけでは、俺だとは分からなかったかな。

そう思いながら、アリアの躍りを、久々に堪能した。


しなやかで、ダイナミックで、丁寧な躍り。

宮殿にいる者みんなが、アリアの躍りに魅了された。
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