月夜の砂漠に一つ星煌めく
宮殿に戻ってきた時、ハーキムは何も言わずに、出迎えてくれた。

おそらく、アリアを連れて帰って来なかった事で、ダメだったと、感じ取ってくれたんだろう。


そして、部屋に戻る歳に、久しぶりにネシャートに会った。

「ジャラール王子。」

はっきりとした口調。

それでいて、悲しげな思いが伝わってきた。


「舞踏団を追いかけて行ったと、お聞きしました。」

「ああ……彼らは、次の場所へと行ってしまったよ。」

なぜだろう。

寂しげな顔は、ネシャートに見せたくなくて、何気に顔を背けた。

その時だった。


フワッと甘い香りがして、気づけばネシャートが自分に抱きついていた。

「……私が、お側にいます。」

「ネシャート?」

「……私の為に、王位を捨てて下さった事、一生忘れません。」


ふと気がつくと、ネシャートの背中が見えた。

白くて柔らかそうで、綺麗な背中。

手を伸ばせば。触れられる距離にあるのに。
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