月夜の砂漠に一つ星煌めく
そんなありきたりの、親子の会話を交わし、父上は俺にもっと近くに寄るように、言ってきた。

「ジャラール。最近女中達が、影で噂をしていると言うのだが、聞いておるか?」

「はい。次期国王は、ネシャート王女だと言う噂を、耳にしております。」

「そうか……」

父上は、少し疲れた顔をしていた。

「ジャラール。ここではっきりさせておきたい。次期国王の事だ。」

「はい。」

俺はてっきりこの時、そんな噂など嘘だ、気にするな、跡継ぎはおまえだと、父上が言ってくれるのだと、思っていた。


「私の跡継ぎは、ネシャートだ。」

「ネシャートが……国王に……なるのですか?」

「ああ、そうだ。そなたは、ネシャートの側で、あの子を支えるのだ。」

一瞬父上が、何を言っているのか、理解ができなかった。


「ネシャートが産まれた時、そう決めたはずだったのだが、いつしかジャラールが上に立つと、皆が思い込んでいるようなのだ。」
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