月夜の砂漠に一つ星煌めく
ネシャートが産まれた時から、決まっていた?

「それだけそなたが、国王としての素質を、兼ね備えていると言う事であろう。」

「……勿体ない、お言葉です。」

俺は父上の顔を見る事ができず、頭を下げる振りをして、俯いた。

「皆の期待に応えるよう、これからも励みなさい。」

「はい。」


そこからは、他愛もない世間話になって、俺が父上の話から解放されたのは、それから1時間も経っての事だった。

俺は王の間から出て後、胸が引き裂かれる程に痛くて、そのまま走って、庭に出た。

そこには、ネシャートが大事に育てた、たくさんの花が、ひしめきあっていた。


『私の跡継ぎは、ネシャートだ。』


父上の言葉を、思い出す。

「うわあああああ!」

突然剣を抜き、目の前の花を、片っ端から切っていった。

「ジャラール様!」

それに気づいたハーキムは、案の定、俺の元へ急いで駆けつけた。

「何をされているのです!」
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