月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ああ。」

「女と言うのは、美しさだけが取り柄では、ございません。」

「あれだけ美姫美姫言って、話が違うではないか。ハーキム。」

部屋の中にいる、他の侍従から、苦笑が出る。

「とにかく!お優しさとか、気が利くとか、尽くしてくれるとか、歌が上手い、裁縫が上手い、夜が情熱的。いくらでも、女の魅力はございます。」

「ふーん。」

「その気のない返事、何年ぶりかに、お聞きしました。」

そう言うとハーキムは、俺をじーっと、見つめた。

「まさかと思いますが……」

「ん?」

「ジャラール様。男がご趣味ですか?」

「そんな訳ないだろ!!」


まったく。

ハーキムは年上なだけに、そう言う事まで、情報を知っている。

「もし……お望みとあらば……」

「どうした?ハーキム。」

「私が、夜のお相手を……」

「止めてくれ!」

もうハーキムに付いていけなくて、たまらず部屋を出た。
< 44 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop