月夜の砂漠に一つ星煌めく
父上も母上も教えていない事を、俺が教えていいものか迷ったが、知らない限りは、こうして何度も夜中に訪ねてくるだろう。

一国の姫君が、夜中男の部屋に入っていくところを見られたら、それこそ結婚相手が見つからないどころか、次期国王の座も、危うくなってくる。

心を決めて、俺はネシャートに事実を伝えた。


「ネシャート。私が今から言う事、気を確かに持って、聞いてほしい。」

「お兄様?」

「私は、ネシャートの実の兄ではないのだ。」

「えっ?」

「父上と母上、両方血が繋がっていない。私は本当の母上、前王妃が他国の王に連れ去られた時、孕ませられた卑しい人間なのだ。」

ネシャートは、目を大きく開けて、驚いていた。

「だからもう私の事は、お兄様と呼ぶな。父上と母上が仰るように、王子と呼べ。」

そう言うと俺は、驚き過ぎて声も出せなくなっているネシャートの背中を押し、自分の部屋から出してしまった。
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