月夜の砂漠に一つ星煌めく
部屋を借りてもいいか聞く前に、ラナーは快諾。

こうして俺とラナーは、ほぼ毎日のように、ラナーの部屋で、話をするようになった。


「本当にハーキムは、俺よりも何でもできるんだ。」

「まあ。それでは、ジャラール王子の、お立場がございませんね。」

「そうなんだ。どっちが王子か、分からなくなる時があるよ。」


いつも他愛のない話を、数時間するだけ。

ある時は、二人でベッドに腰掛けながら。

ある時は、二人でベッドに寝転がりながら。

ネシャートとの話は、尽きる事を知らなかった。


「最近、勉強は進んでいるか?」

「はい。でも、王としての心構えは、女の私には、少々難しくて……」

「そうか。大変だね。」

そんな言葉を聞きつつ、俺はまだ、ネシャートの苦悩の、一つまみも知っていなかったんだ。

「ジャラール王子は、成人の儀でお会いになった姫君の中から、お妃様をお選びなるのですか?」
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