月夜の砂漠に一つ星煌めく
「そうなるのかな……」

現実味など、まるでなかった。

ただ漠然と、そうなるのだろうなぁと、周りの話を聞くだけだった。

だが、ネシャートの様子は、俺の話とは少し、違うようだった。

「私も、15歳になれば、成人の儀を行うようなのですが……」

「ああ。」

「私は、その時に訪れた、近隣の王子達の中から、夫となる方を、決めなくてはならないようです。」

「何だって!?」

俺は驚いて、飛び起きた。

「早く結婚し、早く跡継ぎを設ける。それが、王を継ぐ者の仕事だと……」

心の中に、モヤモヤとした感情が、広がって行く。


ネシャートが、結婚する?

そんな事、考えた事もなかった。


「……嫌だ。」

「ジャラール王子?」

「ネシャートが、他の男と結婚するなんて……」

言葉に出して、ハッとした。

何を言っているんだ、俺は。

ネシャートは、子供の頃妹として、一緒に育った仲なのに。
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