月夜の砂漠に一つ星煌めく
そして、いとこだと言うのに。

「ジャラール王子……」

俺は直ぐに、ネシャートに背中を向けた。

「すまぬ、変な事を申した。忘れてくれ。」

「どうしてですか?」

「叶わぬ事だ。」

「何がです?」


何がと聞かれて、頭がクラクラした。

するとネシャートが、俺を後ろから、抱き締めてくれた。

「教えて下さい。王子の口から、はっきりと。」

口許を手で覆い、口から出そうになる想いを、必死に隠した。

「……仰ってはくれないのですね。」

いつの間にかネシャートは、涙ぐんでいた。

「私は、嬉しかったと言うのに……」

その言葉が、俺の心の鍵を外した。

俺は突然後ろを向くと、涙ぐむネシャートを、強く抱き締めた。

「どうして、そなたは……私の心を掴んで、離さないのだ。」


子供の時から、そうだった。

何かの度に、ネシャートの可愛らしい笑顔が、頭を過った。

こうして、二人で会うようになってもだ。
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