月夜の砂漠に一つ星煌めく
俺は部屋に帰ってからも、ネシャートの香りを、忘れる事ができないでいた。

「どうしてだ!こんなにも、君への想いを、必死に隠そうとしているのに!」

「……そのような事、なさる必要など、ありませんわ。」

ネシャートは、俺の胸から体を離すと、泣きながら笑って、こう言った。

「だって私も、ジャラール王子と、同じ気持ちなのですから。」

「ネシャート……」

「一緒にはいられないと知りながら、王子の胸に抱かれる事を、いつも夢見ています。」

俺は、ネシャートの頬に、右手を添えた。

「ジャラール王子が、美しい姫君と結婚する事を考えると、嫉妬で心がいっぱいになります。醜くて、自分でも嫌になる程に……」

「醜い事など、あるものか。」

そして俺はゆっくりと、ネシャートに唇を近づけた。

「……君に口付けできるなんて、嬉しくて仕方がない。」

「私もです……」

そして俺達は、初めてのキスを、交わしたんだ。
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