月夜の砂漠に一つ星煌めく
それから、しばらく経っての頃だ。

小太りの、例の女中が珍しく、俺の部屋を訪ねてきた。

「ああ……久しぶりだな。元気そうだで、何よりだ。」

「王子こそ、お元気そうで何よりでございます。」

いつもと変わらない挨拶。

だが、ハーキムが侍従として来てから、こんな真昼に女中が、俺の部屋を訪ねてくるなど、異例の事だった。


「……何か、あったか?」

「何か、と言う訳では、ないのですが……」

その言いにくそうな言い方、やはり何かあると、思っていた。

「王子も、ご成長遊ばされ、女性に興味を持つ事は、大変喜ばしい事でございます。」

「……ああ。」

もしかしたら、ネシャートと会っている事が、知れたのかと思った。

「ですが、王子があのような者を、お相手に選ばれるなど、私は想像もしておりませんでした。」

「あのような者?」


ネシャートに対して、仮にも自国の王女に対して、“あのような者“?

ネシャートとは、別な者だなと、ピンときた。
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