月夜の砂漠に一つ星煌めく
必死な訴えに、胸が詰まった。

「私に、どうしろと言うのだ。」

「もし、妃に迎えるおつもりがないのであれば、今後一切ラナーに、お会いしないと、誓って頂けますか?」

思わず、手を強く握りしめた。

ラナーの部屋に、行く事ができなければ、ネシャートに会う事はできない。

どうすれば、よいのだ。


「失礼致します。」

そんな時、ハーキムが外の用事から、戻って来た。

「恐れ入りますが、今のお話、少し聞いておりました。」

すると女中は、ハーキムをキツく、睨んだ。

「ハーキム。王子の侍従と言う者が、人の話を立ち聞きなど、行儀が悪いですよ。お控えなさい!」

「立ち聞きでは、ございません。戻って来たところに、聞こえてきたのです。」

ハーキムも、まだ若いと言うのに、上手く交わすモノだと、感心していたところだ。


「ラナーが、他の女性に嫌がらせを受けているのは、何も官位がないからでございましょう。」
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