月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ええ。それもあります。」

「ならばいっそ、ラナーに官位を与えては、如何でしょうか。」

「官位を!?」

女中は、酷く驚いていた。

「ラナーはまだ、入って数年しか経っていない。例え王太女の専属の女中とは言え、まだ早い。」

「ですが、いづれは官位を、賜る身。でしたら、今授けても、同じことなのでは?」

女中とハーキムは、お互いの顔を、見合った。

「それに、ラナーの元へ王子が通っていらっしゃると、まだ世間に知られていない間に、根回しておくのも、一つの手かと。」

「根回し?」

「王子が通っておられる方は、特別な者だと。」

それを聞くと女中は、厳しい顔を、少しだけ緩めた。

「さすが、ハーキム。王子の侍従に選ばれるだけ事はある。」

「恐れ入ります。」

どうやら、二人の間で、話がまとまったようなのだが……


「ラナーの官位の件、考えておきましょう。」

「はい。」

そして女中は、部屋を去っていった。
< 62 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop