月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ハーキムの言う通り、ラナーは良き者だ。私を庇っているせいで、自分が嫌がらせを受けているなど、一つも語っていなかった。」

俺は立ち上がり、先程の髪飾りを、ハーキムに渡した。

「これを、ラナーに持って行け。」

「しかし!これは……」

「いいのだ。私の相手には、また買えばいいのだ。それにこれは、ラナーを思い浮かべて買い求めたのだろう?」

ハーキムは、受けとるどころか、目に涙を浮かべていた。

「どうして、それを……」

俺は髪飾りにあしらってある、花を指差した。

「これはヨーロッパの、オールドローズと言う花だろ。」

「そうです。」

「花言葉は、“優美”。ラナーとは、“優美”と言う意味だ。」

「ジャラール様!」

感激したハーキムは、足取り軽く部屋を出て、ラナーの元へと駆けて行った。


「ふぅ~」

助かった。

ネシャートとラナーが、花言葉で語っていた事を、バカにせずに、聞いておいてよかった。
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