月夜の砂漠に一つ星煌めく
「先生、今の発言は撤回して下さい!あまりにも、ジャラール様に対して、失礼ではないですか!」

ハーキムは、普段俺に悪態をつくクセに、こう言う時だけ、俺を庇おうとする。

「では、ハーキムに聞こう。王子とは、何だ。」

「王子とは……この国の王を補佐し、軍を率いて国を守り、民の希望の星となられる方です。」

「ほう。余程ハーキムの方が、王子としての立場を分かっているらしい。いっそ、ハーキムが王子になった方がよろしいのでは?」

「先生!」


俺は惨めな気持ちで、一杯だった。

ただこの二人に負けただけで、なぜこれ程までの屈辱を、受けなければならないのか。

もう、嫌になった。

「いいだろう。王子は捨てる!」

「ジャ、ジャラール様!?」

驚いたのは、ハーキムだけだった。

「どうせ王にはなれぬのだ。王子ではなくてもよい!」

そう言って、先生に背中を向けた。

「では、何かあった時には、ネシャート様に軍を率いて頂きますか?」
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