月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ネシャートに?」

突拍子もない事を言われ、思わず先生の顔を見てしまった。

「ネシャートは王女だ。戦えぬ!」

「はははっ!そうでもないですぞ。」

「えっ?」

先生の言葉に一番驚いたのは、この俺だった。

「この前、護身術を教えに、ネシャート王女の元へ行きました。短剣を使っての護身術だったのですが、あの方はなかなか筋が良い。普通に刀を持っても、教えれば十分戦える。」

「先生!もういい加減にして下さい!」

ハーキムは怒りのあまり、剣を地面に突き刺した。

「いい加減にするのは、ハーキム。おまえだ。」

「はあ?」

「いつまでこの方を、甘やかしている?それとも何か?不幸な生い立ち故、可哀想だから、よしよしと子供扱いしているのか?」

もうどうでもよくなって、俺は宮殿に戻る為に、先生が座っている階段を、昇り始めた。

「ジャラール様、どこに行かれるのですか?」

「ハーキム。もういい。私は部屋に帰る。」
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