月夜の砂漠に一つ星煌めく
すると先生は、大きな声で笑い声をあげた。

「嫌になれば、部屋に帰るか。本当に子供だな。」

「何とでも言って下さい。それから、私の事をこれからは、王子と呼ばなくて結構です。」

そしてまた階段を昇り始めた時だ。

「逃げられる者はいいな。」

そう言って、先生は俺の腕を掴んだ。

「お父上は、逃げたくても逃げられなかった。幼い頃から、今まで。遠征の時も、お母上があなたを、お産みなさった時も。」

敢えて、何も言わなかった。

「ご自分の運命からは、逃れられない。例え私があなたを王子と呼ばなくても、この国の王子は、あなた一人だ。それを片時も、忘れてはならない。」

先生はそう言うと、階段を降りて、どこかへ行ってしまった。


それを見届けた後、ハーキムが私の元へやってきた。

「大丈夫ですか?ジャラール様。」

「ああ。」

「何なんでしょうか。あれ程ジャラール様を侮辱するとは。」

「侮辱ではない。」

「えっ?」

「日頃の鬱憤が、爆発しただけだ。」
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