月夜の砂漠に一つ星煌めく
「なんだ、そんな事か。お安いご用だ。」

俺は誰にも聞かず、婦人が抱いている赤子を、受け取った。


俺を見て、目を輝かせている赤子。

ネシャートが赤子の時に、抱いた事はあるが、俺も小さかったから、直ぐに取り上げられてしまった。

「名は、なんと申すのだ?」

「それは……」

二人とも、答えづらそうだった。

「どうした?答えてみよ。」

「はい。実は、王子と同じ名前でございます。」

「そうか。この赤子も、ジャラールか。」

自分と同じ名前の者に会った事はないが、不思議な感覚だった。


しばらく抱いた後、婦人に赤子を返し、私達は部屋へと戻ってきた。

「よくお抱きになりましたね。」

「抱くくらい何ともないだろ。それに……」

「それに?」

「王子とは、希望の星なんだろ?断ったら、がっかりされるではないか。」

「それもそうですね。」

そう言って、ハーキムと一緒に、笑い合った。
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