月夜の砂漠に一つ星煌めく
その頃だった。

俺の成人の儀を祝う為に、舞踊団がこの国を訪れていると言う話を、ハーキムから聞いた。

「さすがはジャラール王子!」

「どうしてだ?」

「今回訪れた舞踊団は、西洋一と評されているみたいですよ。そのような舞踊団が、ジャラール様の成人の儀をお祝いさせてくれだなんて。」

ハーキムがこんなにはいしゃいで見せるのは、あの美姫の話以来だ。

「どんな踊り子なんでしょうね。」

「どんな?」

「胸の大きい者でしょうか。それとも、お尻?いや、腰の括れた踊り子……」


俺は思いきって、日頃思っている事を、ハーキムにぶつけた。

「なあ、ハーキム。ハーキムの好みの女と言うのは、そういう者なのか?」

「はい!」

元気よく、ハーキムは答える。

「分からぬ。ラナーは、そのような女では、ないではないか。」


しばらく、ハーキムと見つめ合う。

「それとこれとは、違います。」
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