月夜の砂漠に一つ星煌めく
飽きぬ男だ。

「ご機嫌、麗しゅうございます、ジャラール王子様。お会いできて、嬉しく思います。」

「私もだ。そなた達の躍りを見る事ができ、嬉しく思うぞ。」

「はい。」

すると舞踊団の皆は、下げていた頭を、今度は床に着く程に下げた。

顔は一切、見えない。

「ジャラール。そなたの成人の儀で、躍りを披露したいと申しているのだが、如何致す?」

「父上が、目にしたいと仰るなら、ぜひ招きましょう。」

「はははっ!そなたの儀式じゃ。そなたが決めよ。」

父上は、目を細めて笑っておられた。


思えば父上だって、俺が生まれた時、男であった為にどれほど喜ばれ、自分の血筋ではないと知り、どれほど落胆されたか分からない。

その上、次に生まれたのは女の子で、その後王妃は子供を成さなかったのだから、俺がいる事で、少しでも安らぎになって貰えばいい。


「では、所望してもよろしいですか?」

「ああ、いいだろう。」
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