月夜の砂漠に一つ星煌めく
すると父上は舞踊団に、俺の成人の儀への参加と、それまでの3ヶ月間、この国の敷地内での舞踊を、許すと宣言した。


そうか。

1度だけの為に、こんな大勢で来る訳がないか。

それを売りに、金を稼ぎに来たのだな。


「そこの者、名は何と申すのだ?」

先程挨拶をした細身の男に、名前を尋ねた。

「はい。テラーテと申します。」

「テラーテ。この国に滞在している間は、どこで寝泊まりするのだ?」

「はい。空き地でも探して、テントを張ろうと思っております。」

「空き地にテント!?」

俺はその時、数年前にハーキムと行った、森の中の野宿を思い出した。


あの後は運がいいのか、野犬と会う事は少なくなったけれど、あの時の事は、半分トラウマのように残っている。

「父上、如何でしょうか。宮殿の西側に空いている敷地を、この者達に貸しては?」

「おお、そうだな。あそこであれば、一団でテントを張れるし、野犬に襲われる心配もない。」
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