月夜の砂漠に一つ星煌めく
「おおー!なんとお優しい方だ。」

舞踊団から、感嘆の声があがった。

「有り難うございます。王子様。」

テラーテの横にいた、金色の髪をした、女の踊り子からお礼を言われた。

「いや……大した事ではない。」

改めて礼を言われると、それだけでも、嬉しいものだ。


その後、舞踊団は去り、俺はまた部屋に戻ろうとした。

「ジャラール。」

「はい?」

国王に、呼び止められた。

「……訓練はどうだ?厳しくはないか?」

王は、いつも父上として、優しく気遣って下さる。

子供の頃は嬉しかったが、今はその度に、胸が痛くなる。

「はい、そのくらいの方が、実戦で役に立ちます。」

俺は国王の前では、嘘ばかり。

本当は、ここ一週間ばかり、訓練を休んでいた。

「そうか。あの者は私と一緒に、いくつもの戦場を乗り越えてきた男だ。少しばかり、気性が荒い。そなたのような優しい男には、多少付いて行けぬ時もあるだろう。」
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