月夜の砂漠に一つ星煌めく
「訓練、また明日から、お願い致します。」

俺は、頭を下げた。

「承知致しました。」

先生も、頭を下げて行ってしまった。


後ろにいるハーキムが、静かに言った。

「……よろしいのですか?」

「ああ。いづれにしても、訓練は必要だ。」

「はい。」

歩き続けると、廊下ですれ違う者、俺を見ると立ち止まって、頭を下げる。

この中の、どれくらいの者達が、俺が本当は王の子ではないと、知っているのだろう。


「ハーキム。」

「はい。」

「私は、王子としての地位を、捨てる事はできるか?」

「……国王に真実を告げ、意義を唱えれば、もしかしたら一般の者になれるかもしれません。」

ハーキムは、声を震わせながら、答えた。

「だがそうなりますと、国王、王妃、ネシャート王女、侍従、女中達とて、悲しみに暮れましょう。もちろん私もです。皆、ジャラール様を王子の位とは関係無しに、お慕いしておりますから。」
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