オレ様御曹司 と 極上KISS
この1週間の滞在で翔は3件の大型案件の契約書にサインをもらった。

あと少しで決まりそうで決まらなかった案件でも翔がトップと話せばすぐに契約締結となる。

翔はここというポイントを常に抑えて話の主導権を握り、相手を自分のペースに乗せてしまう。
これが商才というものなのだろう。

わたしも翔のこの才能には惚れ惚れするしかなかった。

3件目の大型案件を決めた今日で今回のほとんどの仕事は終了となる。

明日は何するんだろ?
明日の予定は1日空いている。

「今日さ、ナンシーのとこ行かね?
一度来てくれって言われてる。
賢太郎も誘ってるから・・・。」

すべての仕事を終えた車の中で翔が窓の外を眺めたまま言った。

「行きます!ナンシーと会えなくなるの・・・結構寂しいなって思ってたので・・・。」

また1か月ほどしたら会えるとはいうものの、ナンシーともうちょっと仲良くなりたかったなと思っていたところだった。

わたしはナンシーがなんでだかわからないけど好きだった。

「意外だな・・・。」

窓の外を眺めていた翔がこちらを向いた。

「何がですか?」

「お前がナンシーになつくなんて・・・。」

「そうですか?ナンシー大好きです。
わたし両親早くからいないので、母親を重ねてるのかもしれませんけど・・・。」

「そっか。お前もか・・・。」

え?お前もかって?

「俺も同じかもな・・・。
母親・・・みたいだよな。ナンシーって。」

翔もお母さんいないのかな?

「あの・・・専務のお母さまは・・・?」

「あー。俺の母親は生きてはいるけどな・・・小さいころ離婚してるからほとんど会ったことない・・・。
俺は父親とふたりだよ。」

翔はそういうと目を伏せて、そのまままた窓の外を眺めた。

「そうだったんですね・・・。すみません。個人的なこと聞いてしまって・・・。」

「いいよ別に・・・。」

翔はしんみりと窓の外を眺めていた・・・。
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