【完】さつきあめ〜2nd〜
「宮沢会長とはよくプライベートで会ったりしてるんですけど
出会った時からお前は才能がある、とか。ナンバー1になれるように頑張ってな、って言われ続けていたんです。
まさかこんな簡単になれちゃうなんて思ってなかったけど…」
才能がある。ナンバー1になれるように頑張ってな。
目の前の美月は、まるでわたしを挑発しているかのように笑っている。
悲しくて、悔しくて、惨めで。
朝日が幸せになれるように祈っていた。あの自分勝手で寂しがり屋な人が、ずっとひとりでいれるなんて考えてもいなかった。きっといつか誰かを好きになって、誰かと笑い合う未来が来るなんて初めから承知していた。
ずっと想ってもらえるなんて、夢物語信じたりしてなかった。
それでもどこかで自分が特別かもしれないと思いあがっていたんだ。
「っ!さくらちゃん?!」
この時、自分がどうしてこんな行動を取ってしまったのか、よくわからない。
いきなり立ち上がったわたしにレイは声をあげて驚いていて、微笑んでいた美月の笑顔が崩れていくのがわかる。
「さくらさん?!」
ホールを歩いていた沢村が気が付いてわたしに声を掛けたけれど、それさえ無視して、わたしは走り出したのだ。
ビルのネオン、人ごみ、営業が始まってしまう事さえ忘れて夢中で駆け出した。