【完】さつきあめ〜2nd〜
「俺は確かにお前に酷い事をした。それを許してほしいなんて思っちゃいねぇよ。
だからお前のためには俺に出来る事はしたいと思ってる。
でも仕事に関しちゃ別だ。俺はお前に七色にとどまってほしいとか、七色グループを守ってほしいなんて思ってねぇんだ。

…正直、俺辛いんだよ…。
お前が俺を憎んでるのは分かってるけど…お前はそういう事するやつじゃねぇってのも分かってる…。
でもさ、お前が俺を憎みながらも俺の店にいるって事は、なんかずっとお前に許されねぇ気がして辛い…。許されたいなんて思っちゃいないのにおかしいかもしれないけど。
金でも何でもお前が欲しいものなら何でもやるから…だから…もうさ…」

「ちがう…」

お金なんて望んでいない。
憎んでもいない。
ただただあなたのために七色グループを守りたいと思った。
けれどそれは勝手なわたしの想いだし、事実、目の前にいる朝日を苦しめている。
朝日は…わたしに消えて欲しがっている。

「俺は………、ただただ笑ってるお前と一緒にいたかっただけなのにな」

ねぇ、朝日、きっとわたしの願いも朝日の願いと一緒なんだよ。
それでも頑なに、朝日への本当の気持ちを伝えなかった。
憎みながらも、こんなに愛してしまったのに。

言葉にならないから涙がこみ上げる。
まだまだ冷たい風が吹きすさぶ6月の夜に、子供のようにしゃがみこんで嗚咽を上げるわたしに朝日は着ていたジャケットを被せて、その後すぐに沢村へ電話を掛けた。

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