【完】さつきあめ〜2nd〜
「女の子は自分だけに優しくしてる男の人じゃないと嫌なんですよ。
特別って言葉が大好きなんですから」
沢村は小声で「まいったなぁ」と呟いて、グラスを口元に持っていく。
カラン、と氷のぶつかる涼しい音がして、いつも通り柔らかい微笑みでわたしを見やる。
「それって、宮沢会長みたいな、ですか?」
いきなりの沢村の言葉に、体中がカッと熱くなるのを感じた。
沢村から、視線を徐々に外していく。必死に気持ちを悟られまいとしたけれど、余裕で微笑む目の前の人にどんな弁解をしたって無駄そうだ。
「敵わないですね…」
「いやいや、僕は何も聞いてませんよ…。
人の噂ほど当てにならないものはないですしね、本人の口から聞いた言葉しか信用しないようにしてます。
なんていっても嘘を売り物にしてる世界に生きているわけですから」
人を安心させるような笑顔を持っている沢村から、嘘を売り物にしてる世界なんて言葉、結構意外だ。
その言葉に付け足すように沢村は言った。
「でも嘘の全てが悪いってわけじゃないと僕は思います。
それは誰かを守る嘘だったり、時に優しい嘘の場合がある」
「それでもやっぱり…嘘をつくのは辛いですよね…
つかれた方も、ついた方も辛い…」