【完】さつきあめ〜2nd〜

「さくらさんは、誰かに嘘をついて、何か苦しいですか?」

沢村の言葉にハッとする。
朝日に嘘をついている。自分の気持ちを伝えずに、苦しめている。
でもわたしは朝日どころか、自分自身にも嘘をついていた。
けれどもわたしの本当の気持ちを伝えたところで、朝日は喜んでくれるのだろうか。真実を知った時、更に朝日を苦しめる事になるんじゃないかと考えて、身動きが取れなくなってしまった。

「沢村さん、あたし……宮沢さんが好きです…」

「えぇ…」

「きっと…沢村さん、光からあたしの事聞いてると思うから、あたしと光の間にあった事何となくわかってると思います…。
本当にずっとずっと光が好きだったんです。初めて恋をした人だったから。
だから、あたし自分が宮沢さんを好きになるなんて、夢にも思わなかったんです。
最初はすごく嫌いだったし、あの人とあたしは違いすぎるし…でも…好きになっちゃったんです…」

「人を好きになるのに理由なんてないんですよ。
それに、さくらさんの気持ちが変わるのもごく自然な事ですよ。
それは誰が悪いとかもなくて、勿論さくらさんだって悪いわけじゃない」


「でも変わってしまった自分の心が嫌なんです…。
ずっと光だけって思ってた…。でもあたしは光以外を好きになってしまった…。
宮沢さんを好きになったけれど、きっとまた誰かを好きになればこの気持ちだって消えていくと思ってた…。
でも苦しいんです…。宮沢さんが違う女の子と話してるのを見たりするだけですごく苦しくなって…。
いっその事宮沢さんの事なんて嫌いになってしまえば楽なのに………」

< 151 / 826 >

この作品をシェア

pagetop