【完】さつきあめ〜2nd〜

沢山遠回りをした。
好きになればなるほど離れていく人だった。
わたしの手を離した冷たささえ、わたしの為であったのなら
そして、ずっと待つよ、と言ってくれた。
でも光にとって、朝日も何物にも代えがたいほど大切な人で
いつもいつも苦しんでいた。
そんな光はやっぱり優しい人だと思う。

わたしには、出来すぎた、人だとも。

「今日はさくらさんの話を聞くつもりだったけれど、逆に悩ませたかもしれないな…」

「いや…そんな事…ありません…。逆に今まで聞いた事なかった話が聞けて…。
あたしは光の事を、光をよく知る第三者から話を聞いた事がなかったから。
何か聞けて良かったと思ってます」

「そう」

そう言いながら、沢村はちらりと携帯に目を落とした。
きっと今日はわたしに時間を割いてくれたのだけど、用事が入ってるのだろ。
沢村もそんなに暇ではないはず。

「沢村さん、あたし少し飲んで行きます…。
だから行ってください」

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