【完】さつきあめ〜2nd〜
「だって一緒に撮った写真ってあんまりないんだよ!!
あ!そういえばこの間誕生日の時に綾乃ちゃんが撮った写真送ってくれたんだ!
朝日にも送るね!」
「おお!送ってくれ!」
ふたりだけの初めての写真ぎこちない笑顔で、わたしが笑っている。
この時はこんな日が来るなんて夢にも思わなかった。
宝物のように、わたしは自分の携帯画面を朝日とのツーショット写真にしている。
彼氏とのツーショット画像を待ち受けにするなんて。自分にそんな日が来るなんて夢にも思わなかった。
「ね、見て、待ち受け」
わたしが自分の携帯を持って朝日に見せると、朝日は嬉しそうににやりと笑った。
「お前は俺の事が本当に好きだなー」
「はいはい。好きですよ、好き」
そう言うと朝日も自分の携帯を弄りだして、そして画面をわたしの方へ向ける。
その中には、わたしと同じ画像の写真が待ち受け画面の中で笑っている。
「こういう事、あんまりした事ねぇけど…」
「あはは~!全然朝日らしくない~!!でも嬉しい!!今日も仕事頑張れそう!」
「仕事はそんなに頑張んなくていいぞ!」
ふたりだけの秘密。
照れくさいけど、同じ気持ちで居てくれる事。こんなにも幸せに思う。
幸せと裏腹に、年明けに開かれる七色グループの新店の話は進んでいた。
街の中心部の一角のビルの中で、最上階の立地の良い場所で、わたしの知らないところで話は進んでいた。
その店の看板になるのがゆりだという事もわたしは知っていた。
幸せの中に陰りのある不安もある事。それでも朝日の夢を応援したかった。その気持ちは嘘じゃなかったんだ。