【完】さつきあめ〜2nd〜
「光……」
負けたくない、と言った光の瞳は苦しそうだった。
「だからこそ、夕陽の事は巻き込みたくないって思った。
お前はすげぇ優しい奴だから、俺と兄貴の間にいたら苦しむってずっと分かってた。
だからこそ、お前が幸せなら俺が身を引いた方がお前の為だって……。
それなのに……どうして俺はお前を離せないんだろうな……」
「…光……
あたしが光や朝日を傷つけてたんだよ…光の優しさを利用したりして…」
「利用したっていいって言ったろ?
俺は夕陽に利用されるだけでも、それでも一緒にいられるならそれでいい。
だからお前は…強くなんかならなくていい…。
けれど願いがひとつ叶うなら、俺の事なんか全然好きじゃなくていい。兄貴の事が好きでも構わない。
それでも兄貴じゃなくて、俺の側にいてほしい……」
その願いが
その想いが
どれだけ強い物だったか。
光は、そのままのわたしを愛してくれていた。息苦しくなるほどの強い愛。
力なくうなだれる体を、優しく抱きしめてくれる。
その腕の中で何も考えずにいられたらどれだけ幸せだっただろうか。朝日への想いごと受け入れてくれるこの人の側にいれば、楽になれる。
どう足掻いたとしても、あの人に勝てない。そんな現実をまざまざと見せつけられて。