【完】さつきあめ〜2nd〜
「おう、由真、沢村お疲れ。
俺らで双葉は閉めておくからお前ら帰っていいぞ」
遠くから聞こえた、大好きな人の声。それが現実だと言われれば、そっちの方が余りにもリアリティがなさ過ぎて。
「あー……こりゃ起きなさそうだ…」
「お前も帰っていいぞ」
「そういう訳にも行かないっすよ。この人と宮沢さんふたりきりにさせたくないし」
「なんだそれ」
「ふたりとも感情で動きすぎなんです。
そんなふたりがふたりきりになって冷静に話し合いなんてならなそうだし……」
「お前、相変わらずクソ生意気だな……」
「今更ふたりきりで会うのが怖くて俺を呼んだくせに悪態ばかりつかないで下さいよ…。」
「お前なー……」
「おい、さくら?さくら起きれるか?
おーい!!」
ずっと遠くで声が聞こえていた気がする。
けれど、朝日の叫び声と共に冷たい水が顔いっぱいにかかって、一気に現実に引き戻されるのを感じた。
「お前!何を!!!」
「つめたっ!!!」
ぼやけた視界をゆっくりと開けて行くと、そこには見慣れた、けれど懐かしい顔があった。