【完】さつきあめ〜2nd〜
「おう、おはようさん。
無茶飲みして、店に迷惑かけて、それでもお前キャバ嬢か?」
髪の毛の先から水が滴り落ちる。その冷たさに段々と意識がはっきりしていく。
「…高橋くん…」
出会った時はスキンヘアでピアスだらけでどこか怖くて
けれど今は髪も伸びて、心なしか立派になった気がするよ。
黒服らしい黒服になった…。
わたしの初めての担当をしてくれた人。ずっとわたしの隠してた朝日への想いに1番に気づいてくれて、厳しくも優しくしてくれた人。
「おう、目が覚めたか?」
「何で…ここに?」
「酒を飲む仕事なんだから酔っぱらったって構わねぇ。
けれど仕事放棄するような酔い方をする女をキャバ嬢とは認めない」
「………」
「ここに遊びにきてるわけじゃねぇだろ?」
「ごめんなさい……」
俺の前で泣くな。と高橋はいつも言っていた。そのせいなのか、高橋の前だと昔から涙を我慢するくせがある。
沢村の柔らかさと優しさを前にしたら、泣いてしまう気がしていたから。だから高橋は来てくれたのかもしれない。
厳しい顔をしてる高橋の隣で、朝日は心配そうに無言でこちらを見つめていた。
ここに高橋がいてくれて良かった。そう心から思った。いま、朝日を目の前にしたら、泣いてただ困らせてしまうだけだったと思うから。