【完】さつきあめ〜2nd〜
「正直いまONEからゆりさんが抜けたら七色は間違いなく終わりますよ。
ゆりさんだけじゃなくて、力あるキャスト。ONEの店長まで、この土壇場になってダイヤモンドに引き抜かれたんですよ?
たとえ菫さんがONEに行ったとしても、ゆりさんの代わりにはならない。
有明さんが裏切った時は何とか踏ん張ってきたけれど、今回ばかりは難しすぎる…。
ゆりさんはただ引き抜かれた訳じゃない。ダイヤモンドの顔としてメディア露出まで話が進んでいるんだ。
このままだとONEどころか、他店の継続だって難しいんじゃないですか?」
「何とかなるって」
「んな悠長な……。宮沢さん真剣に考えてください。
ゆりさんが抜けて、皐月のオープンは白紙だ。それで抱える負債は七色グループで補える物なんですか?
いい加減にとぼけるのもやめてくださいよ。有明さんは、皐月だけじゃない。七色グループ自体を潰しにきてるんですよ?
そしてゆりさんが行った先のダイヤモンドは更に力をつけてくるでしょう。今は存在するグループをどうやってでも守るべきだ」
「うるせぇ!!何とかするって言ってるだろ!!」
朝日が立ち上がり、高橋と睨み合う形になる。
けれど、目の前に立つ高橋は一歩たりとも怯む様子はなかった。
「宮沢さんは有明さんがダイヤモンドで新店を出す時に何としても潰しておくべきでしたよ!
あの頃のあなたにそれが出来なかったわけでもないんでしょ?!
それは弟へ対する優しさですか?!それとも同情ですか?!
俺はもっとあなたは冷酷な経営者だと思っていた!」
立ち上がった朝日の右手が高橋へと伸びる。
けれど高橋はいとも簡単にそれをかわした。