【完】さつきあめ〜2nd〜

しかしロッカーを開けてみると、それがまるで最初からなかった物のように消えていた。
クスクスと小さな女の子の笑いを背中に感じた。

…こういう事があるのか。
まさか自分の身に降りかかるとは思ってもみなかった。
別にONEの女の子たちから歓迎されてるとは思っていなかった。
優しくされる筋合いももちろんないわけで…でもこんな低レベルないじめのような物が存在する事が悲しかった。
わたしは仕方がなく、貸しドレスが掛けられている扉をあけた。

「はぁーー……」

すると後ろから声がした。

「一応双葉のナンバー1だったんでしょ?ドレスの1着も持ってきてないの?」

振り向けば、いつかどこかで見た顔。
うんざりするくらい下らない事が初日から起こって、ため息が思わず漏れる。
そこに立っていたのは、朝日と一緒に行った焼き鳥屋さんで会った事のある、確かミエさん…。
いつか朝日が言っていた、ゆりの取り巻きで、ONEでは不動のナンバー3の…。
その後ろで派手な身なりのユウがげらげら笑っていて、遠慮がちにミィが覗き込んでいた。

この3人はONEでゆりの派閥。特に仲が良いはずだから、光の新店にも行く予定だったに違いない。

構ってらんない。ミエの言葉を無視して、ドレスの山をかき分ける。

それを遮るようにわたしが手に取ったワンピースを奪い取って、床に投げつける。

「なにすっ!!」

そしてピンヒールでワンピースを踏みつけた。

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