【完】さつきあめ〜2nd〜

「そんな……大きな子供いたら困るよ」

「ははっ…そりゃそうだ」

ハンドルを握る朝日が、今度は笑った。
でもその笑顔は胸がぎゅっと締め付けられそうになる切ない笑顔だった。
朝日がずっと、女の人に何を求めているか知っていたから。
生まれた時から手に出来ていなかった、母性をずっと求めていたはずだから。

「何かさ、色々あって」

「うん?」

「七色グループがなくなるかもしれない、とか
会社が大変だ、とか
それでもこんな俺を見捨てずにいてくれる人間がいて、お前とか協力してくれる人がいて
昔はこんな事思った事もなかったんだけど…
俺はただ自分の私利私欲の為だけに会社をでかくして、自分の自由に使える金とか、人から羨ましがられる地位とか
母親を捨てた親父を見返すとかさ…俺は自分がすべてで、仕事で結果を出せば出すほど、自分が小さい時に欲しかった物全部が手に入る気がしたんだ。
でもそれって何か違ってて…手に入れれば入れるほど満たされない気持ちがあってさ
金も地位も手に入れれば入れるほど、すげーちっぽけな物だったって…」

「うん……」

「自分が本当に欲しかった物は、金や地位の中じゃあ生まれなくて…
そして気づいてみたら、小さくて何もなかった俺が初めて幸せを感じた場所って
光や綾に会ったあの家なんだよね…」

懐かしそうに眼を細め、朝日が言った。

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