【完】さつきあめ〜2nd〜
人は変わっていく。
良い意味でも、悪い意味でも
そして朝日が選んだ道が、朝日を良い意味で変えたのがわたしであるのなら、それ程嬉しい事なんかあるもんか。
清々しくそう言い放った朝日の横顔が、何故かすっきりとして見えたから、きっと彼はどんな答えを聞いたとしてもそれを受け入れて生きていける気がした。

幼い頃に止まった時間。
小さな想いを引きづったまま大人になった朝日が
あの日の想いを消化出来る日が来るのなら

暫く車を走らせて、何も言わずにわたしのマンション前へ車を止めた。
分かっていたのだ。どこへ帰る?と朝日は聞かなかった。まだ自分勝手なわたしは、その問いかけを期待してしまっていたよ。
何となく気づいていた事だけど。

「ありがとう…朝日」

小さく息を吸って、朝日の方を向く。
朝日は柔らかな笑顔を浮かべ、こちらを見つめていた。
初めから、こんな顔をする人だっただろうか。いまはもう、思い出せない。

「さくら、これ」

そう言って、朝日はあの日捨ててきたお揃いのキーホルダーを差し出す。
そこにつけられていたはずの、朝日のマンションの合鍵はなくなっていた。
朝日のキーケースにもお揃いのぬいぐるみがまだ揺れている。
でも何となく気づいてはいたんだ。


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