【完】さつきあめ〜2nd〜

そう、けれど後悔してももう遅い。
今更後悔したところで、彼女自身もキャバ嬢である彼女をも手に入れる事は出来なかったのだから。
中途半端な優しさが、全てを失わせた。
俺がもっと真っ直ぐだったのなら、俺がもう少しずる賢かったなら、どちらかは手に入れられる未来だったはずだ。
ゆりが叩きつけた条件。
ゆりが勝てば、七色グループは継続出来ないだろう。兄貴が全てを失えば、自分の願いは叶う。
そして夕陽は無条件にダイヤモンドグループで働く事になるだろう。それを兄貴は何としても止めたかったはず。

少しだけ苛立っていた。俺が思うのは可笑しい事かもしれない。
けれどどうして、もっと兄貴は夕陽を信じてあげられなかったのか。
でも誰だって予想もしていなかった事だろう。
それくらい、七色グループにとって、ゆりは絶対だった。失ってはいけないもの、だった。
知りながら、入念に彼女をダイヤモンドへ引き入れたのは俺だ。

宮沢朝日が仕事をしていく上で、どうしても失えない物。
キャバ嬢としての信頼。
圧倒的な広告塔。
けれどずるくないか?女としては必要としなくなった彼女を、自分の所有物として働かせるなんて。そしてそれを許してしまうゆりを
俺はゆりが1番欲しかった物を知っている。

< 616 / 826 >

この作品をシェア

pagetop