【完】さつきあめ〜2nd〜

「さくらさん、美優さんたちの卓がお帰りになりますから、お見送りお願いします」

「はい!」

卓から抜かれて、美優たちをお店の前まで見送った。

「美優ちゃん、今月で最後でしょ?会いにいくから」

「ありがとう~!高級なボトル沢山おろしてもらっちゃお~っと」

わたしが言うと、美優はおどけて笑った。
ドンペリ10本~なんて、はるなに向かっておどけて抱き着く。

「さくら……」

「綾乃ちゃんも本当にごめんなさい。何度も連絡くれてたのに…返せなくて…」

「あたしの事は全然いいの。ただ美優は本当にあんたを妹みたいに可愛がってたから、ずっと心配してたのよ。
涼とも美優の事ずっと心配で…。あたしや涼は何となくさくらがどこにいるかはわかってたけど…」

ネオンの下、少し離れた場所で美優たちがはしゃいでいるのが見える。
それが滲んでぼやけて見えるのは、もう悲しいからではなかったはずだ。

目の前で真っ直ぐで強い瞳を向ける綾乃が、光と朝日の瞳に重なって見えるから。優しくて強い、寂しくて儚いその瞳が、わたしの大好きだった人たちとどこまでも一緒だったから。

わたしは、綾乃の肩に顔をくっつけて呟いた。

< 64 / 826 >

この作品をシェア

pagetop