【完】さつきあめ〜2nd〜
「それで?!レイの体重分けてあげたい!!
いま何キロ?」
そう嘆くレイはピンクのニットから自分の脇腹のお肉を掴む。
小さくて決して太ってなんかいないレイは、丁度良く抱き心地の良さそうな肉づきをしていた。朝日は痩せている女が好きだと言っていたけれど、一般的にはレイのような健康的なスタイルが男性に好まれている事はこの仕事をしていて何となくわかる。
痩せている女が好きな朝日に痩せすぎだ、と言われるほどわたしは衰弱しきっていたのだろう。
「いまは42キロくらいかな?」
「ちょっとー超嫌味なんですけどー!レイと身長10センチ以上違うくせに体重同じで戻った方とかー!
レイなんか頑張ってるのに全然痩せないんだからね!」
「いやいやレイさんくらいの方が可愛いですよ」
「あ、今レイの事ちょっと子豚って馬鹿にしたでしょ?」
「そんな事ありませんですってー!!」
何気ない会話に、ふたり顔を見合わせて笑う。
こんな風にレイと再び話せる日が来るなんて。あんな中途半端な別れをした後、ずっとレイの事が気がかりだった。
笑ったかと思えば、レイは大きな瞳を揺らしながらわたしを見上げ、遠慮がちに聞いてきた。
「ね、だいじょうぶ?」
多くは言わないレイの瞳が本当にわたしを心配しているのが分かったから、それがすごく温かかった。
「だいじょうぶですよ!久しぶりにお酒飲んでほろ酔いで気持ちいーって感じですぅー!」
「そう。それなら良かった。レイね、さくらちゃんと話したい事沢山あった…」
「あたしもですよ!シーズンズからいなくなった後も同じ系列で働いてればいつか偶然会うこともあるかなーとか思ってたら全然会えないし、だからまたこうやって同じお店で働けるのは嬉しいです!」