【完】さつきあめ〜2nd〜

「まぁどこまで行っても俺は俺だからなー。
兄貴の真似しようたって同じ人間な訳じゃないから、俺はあの人にはなれないってもう認めてるんだ。
昔はそんな兄貴に劣等感を抱えてたんだと思う。でも俺ってプライドが高いからそれを絶対認めたくなかったんだ。
でもいまそんな事も全部認めて、自分は自分でいいと思えたら大分楽になった気がする。
兄貴との約束、文月を出すまで5年もかかってしまったわけだけど」

「ペースなんて人それぞれだよ。それに経営していく上ではスピードじゃなくていかに継続していけるかだしね。
はぁ~~!!!あたしも文月頑張らないとなぁ!!!
せっかく光に貰ったご指名だし?」

「さくらなら大丈夫だよ」

「光、本当は雪菜さんを文月のママにしたかったんじゃないの?」

ニヤリと笑ってそう言うと、少しだけあたふたした表情をした光を見て、笑った。
光は昔は自分の感情を余り見せない人だったけれど、この5年で思った以上に人間らしい人になった。
そんな今の光も、全然悪くない。

「雪菜は自分の引き際がよく分かっている女だった」

「そだね…。あの人はお店の事だって自分の事だって1番客観的に見てるような人だったから」

「腹を括ればママとして名の残す女だったとは思うよ。
でもあいつは女としての幸せを選んだ。ふたつの選択肢がある時、どちらかを選ぶ事は普通だし
それに…さくらは雪菜のこの5年を見てきて、キャストとしても大きく成長したと思うし、店を任せるには信頼の置ける人物だって事は十分わかってるから」


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