【完】さつきあめ〜2nd〜
もう、何度も誕生日を七色グループで迎えた。
1年に1回の特別な日に、光はいつもプレゼントは何がいい?と聞いてくる。
その度にいらない、と答えていた。
欲しい物なんて、なかった。
今、手の中にいれているもので満ち足りていた。
勿体ないくらいの幸福に包まれている。

自分のしたい事があって、自分がいていい場所があって、大切な仲間に囲まれて
これ以上に望む事なんて、なかったはずだ。
あの頃は、欲しい物がいつだって手の中からすり抜けていく気がして、手にしては失って、それに嘆いてばかりいたはずなのに。

満ち足りている、と感じていても、心のどこかで燻ぶっていた想い。
切ない、と思うには時が経ちすぎた程に長い時間が流れた。
変わっていくものがあって、変わらないものもあった。

また、桜が咲き乱れる季節がやってくる。
沢山のおめでとうの言葉にまた感謝して、その輪の中で笑っている自分が見える。

それでも、たまに振り返って、置き去りにしてきた、手放したくなかった宝物を自分の中で探す。



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