壊れそうなほど。
仕方ないから渋々スマホを受け取る。耳に当てると、人の声がガヤガヤと随分賑やかだ。……飲み屋?
「もしもーし。沙奈?」
『ユキだー』
沙奈の声が嬉しそうに弾む。可愛い。
「なにしてんの?」
『今日、啓吾の友達の結婚式で、二次会に出てる』
「ふーん」
結婚という言葉に、ほんの少しだけイラついた。啓吾が「次は俺達の番だね」とか言ってそうで。
「てか、電話してて大丈夫なの?」
『平気。知り合いほとんどいなくて退屈してたし。……ねえ、今二人で飲んでるの? 佑介もしかして酔ってる?』
「うん、そだよ。たぶんベロベロ。……ねー、沙奈。訊いてもい?」
言いながら隣をチラリと見れば、佑介はぐでっとした姿勢で日本酒を煽っている。コイツ、そろそろ潰れるんじゃないの?
「なに?」
『佑介が今言ってたこと。沙奈、コイツに何回も好きって言われてんの?』
「あー……」
電話の向こうで、沙奈が深くため息をついた。